■デビルマン
そんな訳で、色んな意味で今('04年10月現在)話題の「デビルマン」の原作を、読んでみました。

うん、確かに、ネタとしては凄いですね。
まぁ書かれた時代が時代なんで、いささか陳腐に過ぎる設定もありますが、逆に、その時代にこの設定をこういう料理の仕方をするというのが確かに凄い。
少年誌の歴史は長けれども、「人類滅ぼしてやる」っていう悪役と、一人戦う主人公、っていう設定で、主人公が「人間救うに能わず」って結論しちゃうストーリーなんて、この漫画だけかとw

ただ、難を言えば、今まで私がこの漫画を読んでこなかった理由、つまり絵の酷さとか漫画表現としての稚拙さが、やはりキビしい(^_^;)
そりゃー、これだけのネタを創り出したのは凄いけど、でも漫画家なんだしねえ。 漫画として駄目、ってのは本末が転倒している。

なので、とりあえずこのストーリーが良いか悪いかというよりも、どのように表現し直してみればより傑作になるか、ということばかりを考えてしまいました。

まず、何を急いだのか知りませんが、全ての設定やキャラクターの動きが突拍子もなさ過ぎる。
不動明が、最初は心が優しくて臆病なヘタレ男だ、っていうのは良いですよ。 不良に絡まれても対抗できない、なんていう表現は、ベタだけど有効でしょう。(もっともこれだと、優しいのは表現できても正義感に溢れてるというカンジにはならないで、この後の合体への繋がりが希薄なんですが)
ただ、そこに突然出て来て銃をぶっ放す飛鳥了がアリエナイ(-_-;) そんで、その了と明の関係を、たった数コマで台詞で説明しちゃうなんてのは酷いね。

私だったら、導入はまず了の父の死から入りますね。(まぁそれもベタですが)
父の突然の焼身自殺、それを目撃する了、そして死に際の父の言葉の謎を解くために、父の研究を漁り、例の石仮面(?)を発見して、何がしかのビジョンを見る… で、シーンが変わって明の日常でしょう。
それも、いきなり了登場じゃなくて、明と牧村家の関係も台詞に頼らず説明でき、そして明の性格も読者が理解できるくらいには日常描写を行い、転校で了と別れたっていうエピソードもその辺に混ぜて、それから了が出て来れば良いんじゃないかな。

その後の、了が明を合体に誘うのも、なんぼなんでも、地球の命運を背負って己の命を賭けるのに、会ってその日のうちに「じゃあ」って事にはなりますまい(´_`;) できればここで説明と説得に何日かかけて、その内デーモンが襲ってきて、こりゃもう時間がなかんべ、ってのがスジでしょうね。

それからその次のサバトね〜、こりゃ酷いw クスリやって大騒ぎしてるだけでデーモンが来ちゃうんなら、世界中のディスコ(古)やヒッピーの集会は全てデーモンまみれですよ!(笑)
ここはやっぱり、ただ騒ぐんじゃなくて元々デモーニッシュを信仰している連中を集めるなり、集会に参加するなりして、そこで了が父の研究から何がしかのデーモンの呼び出し方(麻薬や音楽じゃなくてさ)を使って、それで合体ですよーっていう方が説得力が出ますね。
あと、細かい所で欲を言うなら、「デビルマン」という言葉は明が合体した時に初めて出すべきかと。

で、この後の展開なんですが、これは何ですか? 編集ミスかなんか?(^_^;)
サバトで明が大暴れして「しまった!了、潰されて死んじゃったかも〜?!」って言ってた次の巻では、明普通に家に帰ってるし、そこでデーモンに襲われたら、了も普通に家で寝てて、「明が危ない」とか行ってベッドから出てくるし( ̄▽ ̄;) イミフメイです。
はい、ちゃんと描きましょうね。 了は、合体はしなかったものの、なんだか超能力みたいの使えるよー 特に明の事とデーモンのニオイが良く分るよー、っていう説明をね。
人間に紛れたデーモンを見つけてみたり、雑魚デーモンに明が襲われるようになってみたり、っていうストーリーの回が3〜4回くらいあってもいいんじゃない?

それから、シレーヌだのカイムだの、ジンメンだのっていうエピソードは、まぁ骨子としては良いですよ。
ただこれも、それ以前の彼らの性質やら日常やら、ジンメンに殺された少女と明の関係性やらが全然描写されてないから、感情移入しづらいんですね。
カイムの話なんて、原作ファンからは「すげーいい」みたいにずっと聞いてたから、どんなゴージャスなエピソードなのかしら、と思ってたら、1〜2回かそこらで出て来て死亡、ってそりゃ早過ぎるでしょう(^◇^;)
デーモンの世界の様子がどうなのか、そこでカイムとシレーヌはどんななのかとかを、他の話の合間に描くべきだし、デーモンが合体した時に意思がどうのとか命がどうの、っていう説明は、あんな緊急時にシレーヌがするんじゃなくて、もっと前に了が研究の成果として説明しとけばスマートなのにね。

んで、あー、明と了がタイムスリップして過去のデーモンがどうのこうの、ってのはこれ完全に蛇足ですね。
まぁこういう、歴史にオリジナル設定を絡めた単発エピソードって、昔流行ってましたから、描きたくなっちゃうのも仕方ないんですが、元々のキャラ設定や目的が希薄で毎回そういう単発で繋いでく形式の漫画ならアリですが、こういう、ちゃんと目的も大流れもある漫画でやるべき事ではない。
まぁ、連載中に増刊号で外伝的に描く、ってんでいいと思うんですけどねえ。

そんなんを混ぜてる暇があったら、本編ちゃんと進めましょうよ。 デーモンが侵攻してきてからとか、人間がそれに対抗する組織を作るとか、デビルマン軍団の組織とか、その辺端折りすぎ( ̄▽ ̄;)
どーして「明日からデビルマン軍団を作るぞ」つって寝て、次に出てきた時はもう軍団がいて地下アジトまであるのさ_○□=
デーモン侵攻から魔女狩りへの人間界の大変遷は、それだけでコミックス3冊くらい費やして描いてもいいんじゃない。
ミーコ同様、デビルマンになっちゃって人知れず苦しむ人のエピソードや、隣人がデーモンかもしれないということで人々の間にはびこる疑心暗鬼と不和、各地で自警団的に勃発する魔女狩り集団、あたりをねえ、ちゃんと感情移入できるくらいの濃度で描きましょう。

さすれば、恐怖と混乱の世界の中で、明の心の拠り所となっていた牧村家の、悲惨な最期、っていう大トラウマエピソードが、凄いパワーを持ってくるんじゃないですか。
あと、水爆とか出すの早すぎですw

まぁ、大ラストは、あの辺はもう好き好きだから何でもいいけど、個人的にはあんまり戦争シーンを長々と描く必要はないと思うので、集結するデビルマン軍団VSデーモンの見開き、んで戦闘シーンは1〜2ページで、あとは最後の了と明、で良いんじゃないかな。

とまぁ、そんな感じで全編脳内補完しながら読んでみた訳ですが、そうだなー、この内容でコミックス10巻くらいで、岩明均あたりが描いてくれないかなぁ。 ジンメンに食われた少女を殺さなきゃいけない明とか、牧村家の人達にデーモンだと疑われて絶望的になる明とか、そういう表現が凄く上手そう。震えるね。
ていうか、寄生獣が既に岩明版デビルマンなんだけどw

あー、、そう言えば、一つとっても釈然としないんですが、あの途中で出てきた「神の光」って、何の意味があったの?(´_`;) あれだけじゃん。。。 神、手抜きすぎw
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