■パトレイバー3
私は実は、映画の1は友達のウチで何となく見たきりだし、2は見てないしで、パトレイバー映画初体験なもので、すごく今更って言うか、今までのを見た人にしてみれば「なにそんな事で感動してんだよ?パトレイバーってのは昔っからそう言うもんだぜ?」とか思われるかもしれないんですけど〜、、 あと、ハナか らメディアミックスだったっての知らなくて、漫画しか読んだことないあたりも大目に見て頂きたいんですけど〜、、(^-^;)
とにかく一人で大感動してしまったのです。

カップリング(違)の「ミニパト」でぶっちゃけ過ぎなほど言及されてる通り、作品としてのパトレイバーって のは「いかにしてこれまでのお子様チックなロボットアニメを脱却するか」ってのを主眼として作られてる訳で、漫画の方を読んでもそれはすごく成功しているっていうか、ああ、こんなリアルなロボットの描写ができるもんなのか、と感心させられた訳でして。
メーカー同志の競争だの、"上"と現場とのやり取り だの、ハードとソフトの兼ね合いだの、お役所とのセメギ合いだのと、やたらと「大人臭い」面が強調されていたことによって、「来るべき未来に社会の中に組み込まれるロボット」ってのが具体的に想像できたのが素晴らしかったんですね。
ロボットなんてなぁ、空飛んで変形したり、平凡な少年がある日突然地球を 救うハメになったり、とにかく叫んでれば光線技が出たりなんてモンには、今もそしてこれからもならんでしょう、って言う(笑)

でも、漫画でそれが凄く良く描けてた、と思ってたけど、この映画ではそれがもう極限まで追求されてるんです。

偏執的にまで描き込まれた「日常」の風景、「ロボット対怪獣」なんてテーマである以上、その「日常」の中に突然、「謎の事故及び変死体」っていう「非日常」が割り込んでくるわけだけど、それだって、その事件起こった瞬間は衝撃的でも、じゃあどうすべきか、って言ったら、警察官が「日常」の延長として、「いつもと同 じ」足を使った聞き込みや過去の新聞の検索なんかを、地味に地味に続けなきゃならないのが当然。 天才的ひらめきを持った素人探偵も、いかにも怪しい謎の人物もいない。 ただもう、ひたすら「日常」をこなしていく。

正直最初の方は、ここまで異様にリアルに描くんなら、もう実写で良いじゃないか、とも思ったけど、やっぱり突然、本当に突然出てくる「怪獣」が「ギャグ」にならないためにはアニメでなければならないってのもあるんだろうな、と「廃棄物13号」が出て来た時に思いました。
13号が出てくるシーンは凄かった〜。
普通の映画ならもっとこう、引っ張って引っ張って、思わせぶりなシルエットを挿んだり、じわじわ迫ってくる恐ろしい音楽でもって、思いっきり盛り上げたところでババーン!と怪獣を出しそうなもんだけど、この映画ではもうね、一瞬。 人が死ぬのも一瞬。 不審な事件が 起こって、「なんだろうなぁ」くらいな雰囲気で調べに歩いてると、「あ」って思った瞬間には食い尽くされてる。 わざとらしい恐怖の表情の大写しもなければ、叫び声すらあげない。 そして怪獣が人を咀嚼して、その体の一部がボタボタ落ちる、なんてな不快感を煽る演出もなし。 ただ互いに走り、食われるや つは食われ、逃げられるやつは逃げられる。それだけ。
それまでの描写が嫌になるほど「日常的」だったからこそ、この突然さは本当に心臓に来ますよ(^-^;)

でもって、そんな超ショッキングな「出会い」をしたにもかかわらず、次の日からはまた「日常」ですよ。 でも考えてみれば現実ってそうでしょう。 どんなに良い事や悪い事が起こっても、それがどれだけ衝撃的でも、次の日からはまた仕事に行ってご飯を食べてお風呂に入って暮らさなきゃならない。
そんな「リアル」。
私はねぇ、こういうのがタマんないんですよ(≧_≦)

それからも、怪獣に襲われかけた刑事は、いつも通りの捜査を続け、その正体に行きつき、報道陣には適当な情報を流しつつ、大掛かりな作戦を練って、いよいよ捕獲と相成る訳ですが、そんな中でも激昂やら派手な議論やらもなく、犯人グループとの手に汗握る攻防もなく、いざ怪獣が現れても「出たぞっ!」なんてセリフもなくて、ただ「第○分隊、目標を確認。○○方面へ移動。以上」なんてな「業務」があるだけ。 そう。これはもう「業務映画」なんですよ(笑)

特にシビれたのは、怪獣を打ち倒すシーン。 いくら破壊しても再生をする怪物の細胞を殺すための特効薬が入った銃弾はたったの1発。 普通なら、スレスレの攻防で緊張感盛り上げまくりの格闘シーンになるところ、イングラム2機と怪獣のほんの何檄かの立ち合いの末、拳銃を持った太田機に怪獣が襲い掛かる、ごく「自然な」流れで、拳銃を持ったその右手を怪獣が咥える。(脳味噌は動物レベルですから、目の前に出っ張ってるモンがあったら噛み付くでしょう。そういう自然さ)
そこで、「今だっ!」も「撃てーっ!」もなく、ごく当たり前に一撃。 その後も「やったぞ!」なんて叫びもない。
はっきり言ってこのシーン、私、泣きましたよ。 この執拗なまでの「リアルさ」具合に。 普通泣かないと思うけど(笑)

そしてこの時同時に、怪獣を作り出した悲劇の女科学者が、「飛び降り自殺をしかけて、半ば恋人でかつ敵(かたき)たる主人公の刑事に手をつかまれ、宙吊りになる」という「よくあるシーン」があるんですが、それだって、二人の間に「死んでなんになるんだ!手を離すな!」だの、「ごめんなさい。でもこうするしかないの。最後にあなたに会えて、良かった・・・」だなんていう、「よくありそうなセリフ」は一切なくって、ただ、雨に濡れた手をつかみきれずに、女は落ちていく。そして死ぬ。
凄い。異常に呆気ない。(私としてはここは、原作の「怪獣の前に立ちはだかる」シーンが欲しくはありましたが)

そしてそしてラスト、死んだ女科学者の墓に参る主人公の刑事がタバコを吸うんですが、そのときに火をつけるライターが、(多分)その女性との付き合いのきっかけともなった、形見の品・・の"はず"なんですが、普通に火をつけるもんだから、手に隠れてその全体は見えないし、そのライターを意味ありげに見つめなおす、なんていうシーンもないから、結局「あれ?」と思っただけで終わってしまうんですよ。

とにかくね、この題材を使っての、ここまで「ドラマ性」というものの一切を殺ぎ落とした演出ってのは、多分実写の映画監督でも、できる人がどれだけいるかどうか。
どうしたって、もっとわかりやすい大げさな演出をしたくなるし、そうなると、アニメや映画やドラマで良くあるような、普通の日常生活じゃ絶対出てこないようなセリフ回しなんかも出てくるわけで、そういう「わかり易さ」に走りがちなところを、あくまで禁欲的に、抑えに抑えた結果、自分の中の「日常を忘れてエンターテイメントにつかり、仮想現実で気持ちよくなる」っていう部分ではなく、なんていうのかな、「振り向いた時に手がぶつかって、コップを倒してしまった瞬間」、みたいな、「ああ、漫画なんかならココでとっさに対処できるのに」と思いつつも、現実ではそんなに上手くはいかないという「やるせなさ」の部分を、まっすぐに刺激されるんですよ。(表現変かな?(^-^;))

この作品はもう、アニメがどうのと言うレベルじゃないすね。映画として物凄いところに居る。
もちろん、だからこそ既存の「よくわかる」表現を求めてる人には全然受け入れられないだろうけど、なんてゆーかね、そういうのはもう良いんじゃないか?っていう。 そういうのはハリウッドなんかにに任せておけば良いんじゃないかと。
宮崎某が、日本のアニメは下品で云々って言ってましたが、そういう連中にガツンと知らしめてやるためにも、こういう、日本でそしてアニメだからこそできる極限的な映像世界ってのを、ぜひ追求して行って頂きたい。
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