■MEMENTO
あぁもう凄い。 脳みそフル回転、っていうかちょっと焦げました(笑) オーバーヒートでラスト間際にギブアップ( ̄▽ ̄;) あんだけ頭使わす映画は久しぶりだったわィ。 ある意味爽快(笑)

何せ発想が凄いよね。 記憶を保てない主人公の"視点"の臨場感を持たす為に、ストーリーを逆から見せる! そうすると、主人公が「ここはどこだ?」って思ってるのと同様、観客もそこがどこだかわからない。 自分の書いたメモや周囲の人の話から状況を"推測"する主人公と、感覚が一緒なんだもんね、見てる方も。

確かに、前健忘症を扱ったミステリーを効果的に展開してく上で、これ以上の手法はないかもねー。 だって何が凄いって、一番の謎の「謎解き」が、時系列的には「最初」に明かされてるんだもん。 だからこれを普通の順序で見ちゃったら、何の謎も不思議もない、ただ「翻弄される可哀相な人」を見るストーリーに なっちゃうわけで、逆から見せて行くことによって、「最初」の謎を「最後」に解く、と言う、まーこの斬新さ!
正直、二度とは使えないけど、凄くショッキングで天才的発想だわ〜。
普通のミステリーだと、ホントもうネタは書かれ尽くしてるから、大体半ば過ぎで落ちが読めちゃうんだけど、この映画に隠された二重、三重の謎には、さすがに驚かされましたよ。

ただね、その斬新なストーリー構成のためにばっかり労力が払われてるせいか、純粋にミステリーとして見たら、ちょっと言葉足らずな感は否めない。
謎のままの部分が多すぎるのよね。 やっぱりミステリーの醍醐味って、膨大な謎が最後に魔法のように解きほぐされていく時の、カタストロフィ的カタルシスのキモチ良さにある訳じゃない。(って思うのは私が京極好きだからかしら?)
あんまり謎が多重に残りすぎてるってのは、一流の作品とは言えないんじゃないかと思わなくもなく。

たとえば、テディは結局何者なのか?ってのは結局わからないじゃない。 彼も嘘は沢山ついてるっぽいからさ。 彼の言うように本当に刑事(悪い刑事?)なのかもしれないし、本当は麻薬がらみの売人かなんかで、レナードを利用してライバルを殺してた、とも考えられる。 テディの呼び出しにビリーが応じてたことを考えても、テディも何らかの悪事に荷担してた人物って方が考えやすいかと。
そうすると、ビリーとレナードの関係も謎。 例えビリーが本当にレナードが記憶をなくしてからの知り合いにしたって、ビリーが死に際に言った「サミー。。」ってセリフ、(多分、単にレナードにビリーの正体についての疑問を持たせるって為だけに使われたもので、深い設定はなさそうだけど、なんかあるとしたら)、もし本当に"サミー"が、レナードが会う人会う人に聞かせてたただの昔話だったら、死に際にそんな言葉なんて呟かないわよね。
すると、テディが「サミーは詐欺師だ」って言ってたことと合わせて、サミーはレナードの記憶の人物とはまったく別で、ビリーの仕事仲間かなんかのただの悪人で、サミー、ビリー、レナードの間には、描かれてた以上の関係があったのでは、とも思える。
すると、レナードは何故記憶の中でサミーをああいう風に登場させていたのか?ってなるわよね。 う〜ん。
多分、インシュリン注射で奥さんを殺しちゃった、ってのはレナードの事であってるんだとは思うの(この映画で一番泣かされた"サミー"のエピソードが"捏造"かもしれない、ってのが、実は私的に一番ショックだった(^_^;))。 回想シーンで、奥さんと一緒に居たレナードの身体には既に刺青が入ってたし、大体、あの状況でテディがわざわざそんな嘘をつく必要がわからないし。。 もし嘘なんだとしたら、テディは単にレナードを利用しようとしてただけじゃなく、なんか恨みがあって、苦しめてやろうって言う意図もあったのかも、って事にもなるなー・・・

ナタリーもまた謎でね。 まぁドッドのことは前から「いつか殺してやろう」って思ってて、レナードを上手く利用してやったんだろうけど、、っていうかレナードがビリーを殺したあとに見た「後で店に来て」ってメモ、あれはビリー宛てだった訳でしょ? それを持って、しかもビリーの車と服で現れたレナードを見て、責めるでもなく即座に利用するってさ〜・・(^_^;) 写真があったことを考えても、ビリーと恋人同志だったのは間違いないと思うんだけどなぁ。 単にもう冷めてたからどうでもよかったのか、海千山千のやり手女だったってことか(笑)。
で、ビリーとドッドは面識ないのよね。 だってビリーの車に乗ってたレナードを見て、ドッドが襲ってきた訳だし。
つかあのあたり、レナードが凄く短絡的でね〜(笑) だってトイレで一旦記憶が途切れてるのに、部屋に戻ってきたドッドを速攻で殴り倒すんだもん(笑) ケンカっぱやいし、ケンカ慣れしてるし、そうなると主人公の「保険屋だった」っていう記憶も怪しいよなー。 大体、奥さんを「殺された」っていう記憶自体が怪しいわけだし。

その辺もまぁ上手いといっちゃえば上手い点で、レナードがあれだけ、「俺は事件以前の記憶は残ってるが、事件以降は記憶がなくなるんだ」って強調してたら、見てる人は「事件以前の記憶」は絶対に確かなものだ、って思い込んじゃうじゃない。 記憶が失くなる恐怖に怯える人なら、持ってる記憶には人一倍固執するだろう、ってね。
あぁ、だからさぁ、この、レナードの記憶が実は全て怪しい、ってとこと(いや、テディの言ったことが全て嘘だとしたらレナードの記憶が正しい可能性も出てくるんだけど、それだと今度はテディの意図が全然読めんし・・)、結局レナードは自らの「悪意」を持って犯人を「捏造」してた(=テディの車のナンバーをメモした)ってとこが、ストーリーの"ガン"になってるんだけど、それってミステリーの手法的にはフェアじゃないんじゃない?(^_^;) 作者の意図的なミスリードだもの。

確かに、謎を全部解くタイプの映画じゃなく、映像の衝撃性のみを楽しむもの、と思えば、謎が残っても良いし、親切な見方をすれば「見る人に解釈の余地を与える」って事になるんだけど、そういうタイプの映画として捉えるには、なんかねー、今一つ物足りない訳よ。 やっぱ「謎解き映画」だと思うの。ていうか思いたい。

さぁ、長くなりすぎた(笑)
何にせよ、脳みそフル回転はキモチ良いざんした♪ なんか、エンジンぶん回してカーボン全部焼き尽くした、みたいなカンジ(笑)
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