■殺し屋1
さて1ですが、まず何せ配役が絶妙でしたね。 1役の人の"いじめられっ子"具合、その謝り方や泣き顔なんて、もう芝居とは思えない!(笑) すっごい雰囲気出てました。
垣原をはじめとした「やくざサイド」は、ちょっと原作とは違うキャラ付けされてる人が多かったんだけど、それはそれで、例えば浅野のめっちゃ素の演技とかは、"新しい垣原"として凄く全体をシュールにキレイに纏める良い位置に居たし、双子の刑事(原作では殺し屋)の松尾スズキとかサイっコーね(笑) 大好き。
カレンちゃんも、ただのその辺のキャバ嬢のまま出すより、あの危険な感じの多国籍具合、カタコトの日本語と流暢な英語のアンバランスさにした事で、面白い味出てたし。
一つ難を言えば、金子はもうちょっと国籍年齢不詳で、何時キレるか解んないような、ヒシヒシとした緊張感を醸し出す人が良かったな。 もっと美形でさ(笑) でもそうすると、唯一の「現実感」が無くなって、「異常ワールド」のみの映画になっちゃうんだけど(笑)

そうね、現実感、現実との繋がり、こういう映画撮る時、その辺をどのくらい見せるか、どういう"立ち位置"に観客を置くのかって、割と大事なポイントなのよね。 あくまで現実の延長とするのか、現実の切り貼り的なパラレルに持ってくのか、特に導入部分でそのどっちで見せるかっていうバランス感覚・・ それで考えると、やっぱVERSUSってすごいんだよなぁ。
ってそれは余談。

閑話休題。 脇役の方もね、細かく良いんす。 特にヤクザの若頭(って言うの?)の高山役の人がさ〜、も、まんまヤクザ!(笑) どっからどう見ても本職! ヘタなヤクザ映画の役者と比べて段違いなんす。 凄い。 劇中でその人が、いつ殺されるか分からないヤクザ人生を嘆いて、「サラリーマンなんて見てるとよぉ、俺もああいう生き方あったんじゃねぇか、なんて思っちまうのよ」とか言うんですが、「いや、ないない。君は何度生まれてもヤクザにしかなれない」とか心の中で突っ込みいれてしまった(笑)
あとは、子供がちゃんと子供らしい芝居が出来てるとかね。 ドラマなんかで良くあるようなわざっとらしいセリフじゃないの。 それ以外の脇の人も全部、見てて「あー、適当な役者振ったんだな」っていうのは居なくて、芝居の下手さで雰囲気壊されるようなことが無いんですよね。
そう見てみると、この三池監督ってのが多分、芝居に細かく細かくこだわる人なんだろうな、と。それは思う。

内容的にはですね、ん〜、期待通りっていうか想像通り? やっぱ色付きな分、原作より多少残虐表現(笑)が省略されてますんでね〜。 そう考えると、漫画ってメディアはとんでもないな(笑)
ただね、CGはいかん。CGがなってない(-_~-) つーかこういう映画なら、特殊メイクとかで出来ない部分は撮り方変えるなりして工夫しろよ、と。 CGに頼ったスプラッタ映画なんてなぁ、ギャグにもならんぜ(;´Д`) 「あちゃ〜・・あいたたた。」って感じだもん。 まぁその特殊メイクの方も、凄く良く出来てる部分と豪いチャチい部分とが両方あって、時々興醒めだったのですが。

あとね、ラスト!ラストなにアレよ?!(^-^;)
いや、クライマックスのアレは凄い良いと思うんですよ。 主人公が子供を殺す、なんてのを日本の映画で撮れるとはね。そりゃびっくり。
でもそれしちゃったらさあ、漫画のラストのあの「ど〜しよ〜もなさ」が全然ない訳でしょ。 なんか普通人になっちゃって能力も面白みも失ったイチの代わりに、あの子供が新たな殺人マシーンとして育てられる、ってぇキリのなさというか、それまで死んで行ったやつ等の意味のなさっていうか、それが山本漫画の持ち味なんだと思うのに〜。 子供死んじゃったおかげで、ジジィ自殺なんてぇ有り得ない陳腐さで終わりになっちゃっててさ(-_~-)
ああ、ラストをちょいと書き換えるだけで、それまでの全編が全く意味の違ったものになっちゃうってのは、映画では良くあるけれど、怖い事ですよ。
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