・・・ Dummy Angel X ・・・
なんということでしょう。


Iedaとその仲間達が去ってから数年、もう記憶の中にしかその痛ましい痕跡が残って居ない今になって、また、新たな擬天使を手に入れることになろうとは。

しかも、今度の個体は、まるで夢でも見ているのかと思う程に、美しく、聡明で、しかも従順な生き物なのです。

以前、友人の元で比較的良く躾けられた擬天使を見た事はありましたが、あれらも結局は己の欲望に従って姿を消してしまったように聞きますから、まさかこのような完璧な個体が存在しようとは、思ってもみませんでした。

控えめな闇色の翼を持ち、全身からエキゾチックな芳香を放つそれは、名を、yEssというそうです。

あの甘い香りは、やはり擬天使特有の毒なのでしょうか。

しかし、他の擬天使達よりも劣悪な環境で育てられたはずのこのyEssは、その細く白い肢体の裡に痛みと苦しみを抱えながらも、それでもあくまで礼儀正しく、慎ましく、しとやかであり、人を害する毒を滴らせることがありません。


ただ、その体から放つ甘い香りだけ

甘い


甘い



甘い






知らぬ間に、
  心臓も、
     脳髄も、
           溶け腐ってしまうほどに





   …
          甘


                      い

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